1200年の歴史を持つ四国八十八箇所巡礼を題材としたストーリーです。“八八さん”と呼ばれる札所を守るキャラクターが毎号登場!

心と向き合う 八十八霊場紹介 たくさんの人と出逢って違う自分を見つける旅

摩廬山(まろざん)正寿院(しょうじゅいん)焼山寺(しょうさんじ)

第十二番札所 焼山寺/山門 後の世を思えば恭敬焼山寺死出や三途の難所ありとも 虚空蔵菩薩/のうぼう あきゃしゃ きゃらばや おん ありきゃ まりぼり そわか
徳島/阿波 DATA
宗派:
高野山真言宗
開基:
役行者小角(えんのぎょうじゃおずぬ)
創建:
弘仁6年(815年)
住所:
徳島県名西郡神山町下分字中318
電話:
088-677-0112
駐車場:
あり(有料)70台~80台
普通 300円 ワゴン車 500円
宿坊:
あり(30人) ※山上のため予約必須
歴史・由来

焼山寺山(標高938m)その8合目に位置し、四国霊場で2番目に高い山岳霊場。
四国霊場には「へんろころがし」といわれる札所がいくつかありますが、焼山寺もそのひとつです。昔から険しい坂道の難所がある「修行の霊場」でありました。
縁起によると、飛鳥時代に役行者(えんのぎょうじゃ)が山を開いて、蔵王権現を祀ったのが寺のはじまりとされています。
この山には神通力を持った大蛇が棲んでおり、しばしば火を吹いて村人たちを襲い苦しめていたそうです。 弘仁6年(815年)頃といいます。弘法大師がこの地に巡られた時、杉の木の下で休んでいると阿弥陀様が夢にあらわれ周囲の異変ぶりを告げられます。目を覚ますとそこは火の海に。そこで麓の川で身を清めて山を登ると、大蛇は全山を火の海にして妨害したそうです。大師は「摩廬(水輪の意)の印」を結び、真言を唱えながら進むと、大蛇は山頂近くの岩窟で姿をあらわします。大師は一心に祈願し、虚空蔵菩薩の御加護のもとに大蛇を岩窟に封じ込めたそうです。そして自ら刻んだ三面大黒天を安置して、被害を受けていた村人の大衆安楽、五穀豊穣を祈ったそうです。それ以来天変地異は起こらなくなったといわれています。そのお礼に虚空蔵菩薩を刻み本尊としてお寺を建立したそうです。
山は「焼山」になってしまったので、大師が「焼山寺」と名付けます。「摩廬」の山号も「焼山」の寺号もこうした奇異な伝説に由来するものです。

見どころ

三面大黒天

中央が大黒天、右面が毘沙門天、左面が弁財天の像。
災いを祓い福を呼ぶといわれており、納経所には三面大黒天のピンバッチもあります(1,500円)。

杉(県の天然記念物)

境内には樹齢数百年の杉の巨木が並んでいます。特に目立つのが納経所の前の杉で、樹齢500年だそうです。

杖杉庵(じょうしんあん)

四国遍路の元祖・衛門三郎(えもんさぶろう)の終焉の地。お寺から車道を1.6km下った所にあるお堂。
杖杉庵の納経は焼山寺の納経所でしていただけます。

衛門三郎

~ 四国遍路の元祖・衛門三郎のお話 ~

西暦824年の出来事です。
弘法大師は四国霊場を創られ、最後の見回りの途中、伊予の国荏原の庄(現在の松山市惠原町)に立ち寄られました。
その時、文殊菩薩様の化身があらわれ「お大師様、ありがたい霊場を開くといわれても誰一人仏の道にはいられません。ここに罪深い人が住んでいます。改心させて来世の先達にしてはいかがですか」と告げられたそうです。

衛門三郎は伊予国の荏原(えばら)に生まれます。悪鬼長者と村人に恐れられ、たいへん欲深い男だったそうです。
ある日托鉢の僧が三郎の家の前に立ちます。もちろん欲深い三郎は追い返します。それでも、毎日その托鉢僧は三郎の家の前に立ったそうです。その8日目、ついに三郎は持っていたホウキで僧を叩き、持っていた鉢を叩き落としたそうです。鉢は8つに割れ散ったそうです。
その日を境に托鉢僧はあらわれなくなりました。その代わりに三郎の8人の子供達が8日間のうちに次々と死んでいったそうです。三郎は毎日毎日泣き暮らしたそうです。
ある晩のことです。三郎の枕元に大師があらわれ「8人の子供が亡くなったのは、汝の罪悪が深い為に亡くなった。一心に四国寺院を巡拝しなさい、その時私が会って汝の罪を許してあげよう、疑ってはいけません」と告げられたそうです。あの托鉢僧は大師だったのです。
三郎は「お大師様に会って罪を許していただくまでは家には帰って来ません」と妻と別れ、白衣に身を包み、手甲、脚半、頭には魔除けの笠を被り、右手に杖を持って旅立ちました(現在もお遍路さんの姿になっています)。
三郎は寺院を巡るも、大師は旅立たれた後。紙に自分の住所、氏名、日付を記し、大師がこの札を見ると三郎がお参りした事がわかるようにと、お堂に貼っていったそうです(このお札が後の納札といわれます)。

難行苦行の毎日。
大師の後を追いかけて八十八ヶ所を歩きます。ところが、8年かけて20周まわっても大師に会うことが出来ませんでした。
西暦832年(閏年)の事です。逆にまわる事で大師に会えると考えた三郎は21周目10番札所切幡寺より逆にまわり、ついに焼山寺の麓で大師に巡り会います。
ただ、三郎の命はここで果ててしまいます。大師は三郎を許し「よくここまで来た。今までの罪はもう無くなっています。しかしもう命は尽きようとしている。何か望みはあるか」と尋ねられ、三郎は「もう一度生まれ変わって、民百姓の為に功徳をつみたい」と言い残して息を引きとったそうです。大師はこの時「衛門三郎再来」と書いた石を三郎の手に握らせ、再来を祈願したそうです。

その後、伊予の国司に子が産まれるのですが、手を握ったまま離さない。心配し安養寺というお寺でご祈祷してもらうと、手がひらき中から「衛門三郎再来」と書いた石が出てきたそうです。その若君は後に民百姓に喜ばれる政(まつりごと)をしたそうです。

この時に手から石が出てきたことから、安養寺から名前を改め、石手寺(51番札所)となったそうです。
また、三郎が亡くなった時、大師が墓標として三郎の杖を立てると、杖から芽が出て大きな杉が育ったといわれます。残念ながらその杉は享保年間に落雷で焼けてしまい、現在見ていただける杉は、そこから芽が出た二代目といわれています。杖が杉になった。ここから「杖杉庵」と名付けられたそうです。杉の横には三郎のお墓も見ることが出来ます。「杖杉庵」は12番札所焼山寺から1.6km下ったところにあり、衛門三郎終焉の地といわれています。

ここがポイント!

お寺がある神山町は、徳島県の特産である梅やすだちの産地です。山を下って行く車道沿いには無人の販売所、大型バスの駐車場には地元の特産品を扱うお店があります。梅干しがオススメです。また、びっくりされる方も多いのですが、お寺でも特産品を扱っていて、納経所でしば漬けを購入出来ます。業務用? と思うほどの量が入って400円。ファンは多く、毎回買って帰られる方もいらっしゃいます。

そして、この神山町には個人的にオススメの宿があります。
皆さんは善根宿というのをご存知でしょうか? 善根宿というのは、お遍路さんに無料で宿を提供してくれるお宅の事をいいます。
ご紹介する宿は、残念ながら今は諸般の事情により無料ではありませんが、今でもかなり格安な料金で1泊2食で泊めていただくことが出来ます。大型バスの駐車場にある特産品も扱っているお店「すだち館」といいます。ご主人が車で近くの神山温泉に連れて行ってくれます。泊まるのは休校の教員住宅。お世辞にも綺麗な宿とは言えませんが、もともとは善根宿。それ以上に人の温かさに触れる事の出来る宿です。料金は変動するものですのでここでは記しませんが、歩きお遍路さんの地図『へんろみち保存協会編「四国遍路ひとり歩き同行二人」』にも、現在は載っています。チャンスがあれば是非泊まってみて下さい!

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《紹介文》著:野村常晋(霊場会公認先達)

萌える(!?)四国八十八箇所霊場紹介

境内配置図 灼(あらた)

灼(あらた)

第十二番札所・焼山寺に棲む、八八さん十二女。
やんちゃ者だけど根はいいヤツ。

火を吹く大蛇をイメージして。首と足に巻かれた鎖はお大師さんに封印されたときの名残。

事ある毎に火を点けて燃やそうとする困ったちゃん。
でも、姉(主に六女・癒安)に水をかけられてすぐに鎮火するので今のところ大事には至っていない。
おそらく、これからも大事に至ることはないだろう。

名前の由来は、火から連想する言葉・漢字から。
灼熱の「灼」は気性の激しさが想像でき、何より「あらた」という読み方が原作者のツボにはまったようで即採用となった。

◎八八さん×拠り所
焼山寺山。
火を吹く大蛇が封印されている。らしい。

八八さん拠り所

◎八八さん×スイーツ
灼をイメージして誕生したスイーツ。
ほのかに光る青い炎。広がるブランデーの香り。砂糖とブランデーの香りがよりコーヒーの香ばしさを引き立てるカフェロワイヤル。  by もへんろ茶屋

八八さんスイーツ

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恵
はあはあはあ。「遍路ころがし」が、こんなに、キツイと、は……
幸夫先生
はっはっはっ。幸野くん、息が上がっているようだね。どれ、僕が手を引いてあげよう。何、遠慮はいらないよ。君と僕の仲だからね。さあ。さあ! さあ!!
恵
ぎゃああ! 何か出てきた!!
幸夫先生
おや、どうしたんだい? 急に走り出すなんて。ああ、そうか。僕に心配をかけまいと“元気アピール”をしているんだね。いやだなあ、そんなに気をつか(ry
あゆみ
ああ。二人とも何だかんだ言い合いながら……ものっすごい勢いで走って行ってしもた……
灼
ほっとけほっとけ。どうせすぐにバテて、そこらに転がってるって。つか、「お遍路」ってそんな焦って巡るモンじゃねぇだろ。
あゆみ
ほんと、その通りやと思う。折角の機会なんやし、ゆっくり歩きながら恵といろいろお話したかったのに。
灼
まあ、納経所が5時に閉まるってんで、ちんたら歩いてられねぇよ! って場合も確かにありゃあするけどさ。それでも余裕は必要だよな。心によ!
あゆみ
うんうん。灼さんって乱暴で恐い人ってイメージやったけど、実は何気に常識人なんよね。寛容って言うか。
灼
実は、とか、何気に、とかは余分だけどな……。でもま、焼山寺みたいな山に囲まれた場所に棲んでりゃ、誰だってちったあ丸くなるんじゃね?
あゆみ
火を吹く癖さえなければねえ。
灼
あ? そりゃねぇわ。何も燃やさない俺は俺じゃねぇもん。
あゆみ
何か、危ないコト言いよる……(ガタガタガタ
灼
おっと、先に行った二人のうち一人発見。あーあ。階段の下で倒れてら。頑張って上まで行きゃあ、疲れも吹っ飛ぶ“出逢い”が待ってたのによ。
あゆみ
曲がりくねった小道を進んだ先に、突如、出現した階段! それを上って行くと見えてきたのは一本の大きな木――そして、その下にはお大師さんが!!
恵
状況説明サンキュ……。「浄蓮庵」、別名「一本杉庵」っていうらしい……。
あゆみ
なあんだ。知っとったん。てか、辛そうやねえ。大丈夫?
恵
そりゃ、山道をほぼ全力で駆け抜けてきたからな……。悪いけど、少し休ませてや……。
灼
ったく。――で、もう一人はどこ行ったんだ?
恵
ああ、先生なら先に行くって言うて、そのまま走ってった。
灼
へ? マジで? 何、センセイってニンゲンじゃねえの?
あゆみ
灼さんもビックリ。先生の隠された正体とは――次回に続く!(嘘)

第十三番札所へつづく

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前の札所まで : 13.0 km

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次の札所まで : 27.0 km

徳島/阿波 ~ 発心の道場(一番~二十三番) 高知/土佐 ~ 修行の道場(二十四番~三十九番)
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四国別格二十霊場 ~ 番外札所(一番~二十番) 東寺(教王護国寺) 高野山金剛峯寺
結願